ウoooは、ウェーブのかかった前髪をかき上げながら「はじめまして、ウoooです。日本の方は『うみoさん』と呼んでくれます。よろしく」と自己紹介しました。
175センチと長身ながら、がっちりした体系、日本語はユooよりさらに流暢、饒舌です。

3人揃ったところでディナーとなり、3~4皿料理が届けられました。
家庭料理とは、何のことはない出前でした。
トマトとキュウリ、ポテトのサラダ、ケバブなどトルコの定番メニュー、私はワイン、ふたりはウオッカを飲みながら談笑し始めました。
ウoooは、絨毯鑑定士の資格を取るのにいかに努力したか(美術、デザイン、歴史、色彩の勉強)を話し始め、26人の中でも2~3番目の腕前だと言いました。

彼は興味深い鑑定話(ばなし)を披露しました。
友人がある日、夜中に電話をかけてきたそうです。古いキリムが手に入ったが、どうもビザンチン時代の代物と思われる、今すぐ鑑定に来てもらえまいか。
起こされた彼は明日にしてくれと云うが、相手は興奮していて明日まで待てないという。
「わたし、眠たいのに彼の家まで行ったよ。でも驚いたね。確かにビザンチン時代のモノだった」
後日、糸からの判別、鑑定により、ビザンチン時代のオールドキリムに間違いないと認定されたそうで、何千万もの価値があろうという逸品だった。

私はこういう話が大好きなので、日本にも面白い話がある・・・と運慶の話を始めました。2008年に起きた美術界の大トピックス、ある外資系企業社員が東北のとある骨董屋で見つけた1体の仏像にまつわる話。ウン10万で手に入れた仏像が、何と運慶作の「大日如来座像」と分かり、文化庁の買い取りにも応じず、クリスティーズのオークションに出展させてしまったくだんの社員氏。幸い14億円余りで三越が落札し、文化財流出を免れたが、三越の陰には、また別の団体が潜んでいた・・・。

ウoooは、運慶を知らなかった。
まあそういう事もあろうが、こんな面白い話に彼は一向に興味を示さなかった。私は不思議に思ったものだ。オールドキリムの話も眉唾ものかもしれない。
同じ様な法螺話をその都度脚色しながらしゃべっているんだろうと、今では思っています。